だいぶ前から、今宮戎のお祭りには連れて行ってやろうって思ってたんだけど、おまえが人ごみを嫌がるんじゃないかと思って、なかなか連れて行くことができなかったんだ。

だけど、そんなのは取り越し苦労で、おまえはむしろ、「何があるのかなぁ?」とでも言いたげな感じに、ずっとキョロキョロしてたね。神社の中にはさすがに入ることはしなかったけど、そのあと、新世界界隈をウロウロしているときでも、街の光景を心から楽しんでいたよね。

こんなに楽しんでくれるなら・・・と、来年も再来年も連れて行くこと、考えてたんだよ。今度は新世界の通天閣のそばも歩かせてやろうと考えてたんだよ。

でも、もう今宮戎には行かない。
のこを連れてだけでなく、私ひとりででももう行かない。
それはおまえとの想い出が強すぎて心が痛いから行きたくないんじゃないんだ。

私はもう、金輪際、神社にもお寺にも教会にも、そしてそれらの初詣にもお祭りにも一切かかわらないと決めたからなんだ。金輪際、そんなものなど楽しみたくもないし、天地神明など頼みに値しないとわかったからなんだ。

たった数か月前・・・こんな元気にしていたおまえが、今はもう、この広い地球上の、この広い広い宇宙の、どこに行ってもどこを探しても、もう・・・どこにも存在してないだなんて。私は今でも、信じたくないんだ。それを受け入れることができないんだ。

こんなに楽しんでくれるのなら、もっともっと!!早くに気付いてやったら・・・。もっともっと!!連れて行ってやりたかった。
今宮戎十日戎
   ・新世界(浪速区)つづき・・・

→「畜生」ってなんて呼ばないで。。。神が見捨てた母子の愛。
近所にある公園だけど、いつも子どもの多い公園だから、こんなにのんびりとゆったりと連れて来てやったのは初めてだったね。1月というのに、日差しもポカポカと温かく、おまえたちはいろいろ散策をしたり、探検をしたり、のびのびと楽しそうに過ごしてたね。

おまえは知らないだろうけど、この公園は35年前、小学生だった私がいちばんよく遊びに来てた公園なんだよ。そのお山の遊具でもよく遊んでたし、その穴の中をくぐって、かくれんぼや鬼ごっこもよくしてたんだ。

その穴を覗いて、おまえに何か見えたかい。
その穴の向こう側に35年前の子どもの私が遊んでいる様子が、おまえの目には映ったかい。


私は子どものときは、決して恵まれた家庭ではなかったし、想い出すのも嫌になることがたくさんあった。大人の今になってもたくさんのコンプレックスとトラウマを持っているほどなんだ。

でもね・・・。生まれ変われるのなら、そんな私に何度も生まれ変わって、何度もおまえとまた会いたいよ。どんなに嫌な子供時代であっても、想い出したくもない子供時代を過ごしても、25年後・・・あのペットショップでまたおまえとふたたび出会うことができるなら、そんなことはいくらだって私は辛抱できるよ。我慢するよ。

むかしは絶対に何が何でも自分自身に生まれ変わるのだけは嫌だと思っていたけど、今は違う。
自分自身に生まれ変わって、おまえたちと楽しい日々を過ごしたい。そしてふたたびおまえたちと暮らすときは、今度はおまえをもっともっと!!長生きさせるから。ちゃんと最後まで後悔のない人生を幸せに過ごさせてやるから・・・。
今度は、この日が、この公園来るの絶対!!最後にはさせないから。今度は、このあとも何度も何度も来ようね。
玉出西公園(西成区)・・・
カゴの中で乗っていることが多かったから、中開(なかびらき)の交差点から、鶴見橋商店街までの700メートルぐらいの距離だったけど、全速力で走って帰りましたね。

肩幅大きく、腕太く、太ももはぶ厚く、お尻大きく、ウエスト細く・・・心臓の病気が出るまでは、私は本当に厳しく、おまえたちを“走って当たり前の子”として、ずっと育ててましたものね。グランドをほかのダックスの子といっしょに走り始めても、その子が3周回っている横をおまえたちは余裕で7周走るほどだったものね。心臓の病気をしてからでも、それでもグランドを15周は歩くようにさせ、決して、筋力が衰えないようにだけはさせていたし・・・ね。

10歳になってでも、バネのように、跳ぶように、からだを伸び縮みさせながら走るおまえの走る姿は、本当にきれいだよ。美しいよ。大好きだよ。

そんなおまえを、少しぐらい衰えたとしても、あと2年か3年は見れるとふつうに思ってたんだよ。
おまえは知っていたかい。
かあさんだから知っていたよね。
のこが、おまえ以外ではこんなに引っ付かれるのを嫌がることを。上に乗られるのがものすごく嫌いなことを。

ほかの子が乗ると、それがたとえどんな仲の良いお友だちでもものすごく怒るんだよ。のこが許しているのは、唯一、かあさんであるおまえだけなんだ。

この自転車のかごは、もともと自転車に付いていたものじゃないんだ。
おまえたちふたりが乗るのに、いちばん最初に自転車を買い替えたときに大きなものに交換したんだ。それでも、おまえたちふたりには少し小さいようにも思えたけど、おまえたち親子が引っ付き合うのにはちょうどいい大きさだったのかな。

今はね。
このかご、ものすごく大きく感じるんだ。のこひとりでは広すぎるんだ。
おまえが引っ付いていたから、交差点の歩道のわずかな段差も、ブレーキを掛けたときでも、ふたりだったから揺れなくて済んだけど、のこひとりではものすごく揺れるみたいなんだ。

そんな小さなことひとつ取っても、おまえがいないとダメなんだよ。